「桃太郎さんの荷車を」
「当工房の火焔太鼓の柄のようなかっちり古典的な感じで」
「宝尽しを詰めて」
「前柄の関東巻側には猿、犬、雉」
「関西巻側には汎用性のある宝尽くし」
「地色は春らしい感じでお任せ」
「着て行くのは主に観劇(もちろん桃太郎♪)」
というご注文でした。
桃太郎さんの荷車を図案に!
初めてです。
でも、当工房の火焔太鼓や宝尽くしの雰囲気で、とお伝えくださったので、すんなりとイメージが湧きました。


合わせる予定のお着物を伺うと、
「帯にお着物を合わせます」
とのこと。
それでは心おきなく図案作りです♪
とはいえ、他の制作のいろんな工程が次々に巡ってくるなか、じっくりと時間をかければいくらでもかけてしまう図案作りはそうすんなりとは進みません。
ここが一番大事なところなので、焦らず時間の許すかぎり気のすむまで取り組みます。
だいぶお待たせした末に一度図案をお送りし、OKをいただきましたが私自身気に入らないところがあったので描き直してまたお送りし。。
その間も、細かいところのご希望をメールで確認していきます。
例えば幟に何を書くか?とか、犬猿雉はどんなタッチで描くか?とか。。
商品としてプロの方からのご依頼の際は、細かく細かく打ち合わせてイメージを彫り上げていきますが、一般のお客様の場合はざっくりとしたイメージを伺ったらできるだけ具体的にイメージしやすい形でご提案し、細かいところは私が判断したり、迷ったらやはり伺ったり。。
メールであっても、打ち合わせを重ねるうちにそれぞれのお客様との呼吸が自然とできあがっていきます。
だんだん他人とは思えなくなってまいります(笑)
合気道のお稽古をしていると、同じだなあといつも感じます(^ ^)



図案が完成したら、制作は一気に進みます。
一気に進みすぎて、写真を撮るのをいつも忘れてしまうのですが。。
青花という後に消える染料(もとは露草の汁)で下絵を描き、

伸子という竹製の棒で生地をぴんと張り、もち米とヌカと塩でできた糊に亜鉛を混ぜて糸目を置き、

画像がありませんが、生地を長く張り、糊がだびない(溶けすぎてふやけない)湿度を見計らってふのりを煮て溶かした液体で地入れをし、
乾いたら友禅します。(色挿しのことを〝友禅する”と言います。)

糸目糊は、亜鉛が入っているせいで黒く見えます。
洗い流せば糊は無くなって白い線になって残ります。
線が黒いか白いかで印象はだいぶ変わります。
それを見越して色を調合し、時々裏から確認しながら友禅していきます。
またまた写真を撮り忘れてますが、、
やはりもち米でできた糊で模様部分を伏せ、表面にヌカを撒いて安定させてちょうど良いところまで乾かし、いよいよ地染めです。
地色はいつも迷いどころ。。
色は乾けば変わり、蒸せば変わり、光源で変わり、これだけ地色が薄いと帯芯の白にも影響されます。
今回は、春らしい色でお任せとのことでしたので、先に「この色」と色見本を決めず、裏から図柄をながめつつ、春めいてきた房総の空をながめつつ、自由に調合しました。
画像は裏から見たところ。
地色が薄すぎて白にも見えますね。

乾いたら1時間近く蒸し、洗い、乾かし、最後に顔料仕上げと金加工。
画像がだいぶとびました(^ ^;)
私が師匠から引き継いだ昔ながらの真糊友禅では、この仕上げ加工がとても重要です。
描き込みすぎて染色ならではの良さを損なわないよう気をつけながら、目に快感をあたえる表情を目指していきます。


仕上がってみると、このご依頼をいただくまでは思い浮かべもしなかった帯がそこにあります。
「あら、こんにちは(*^ ^*)」
といつも思います。
観劇のご予定にぎりぎり間に合ったようで、良かった~。
→染帯名古屋帯~マルニ友禅工房WEBショップ


